中国の金型メーカA社は2012年12月にプラスチック容器の金型のデザインを意匠出願し、2013年12月に中国の意匠権を取得しました。

日本の金型メーカB社は2010年に蘇州に進出してプラスチック容器を成形するための金型を製造していました。

B社が作る金型は精度が高く安いことからB社の金型を使う中国企業も多くB社の人気製品です。

ところが2014年1月、A社はB社に対してA社の意匠権を侵害する金型を製造しているとして差止め等を求める訴訟を起こしました。

 

 

今回のケース、A社が意匠出願する前から、すでにB社は金型の製造販売をしていたのですから、本来ならば意匠権が登録されるはずはありません。

ところが中国の場合、意匠は無審査で登録されてしまうので、すでに世の中にある金型のデザインでも出願すれば登録されてしまいます。

 

B社はA社の出願前からすでに金型を製造していたことを証明する資料として裁判所に金型の設計図の公証書を提出しました。

実はB社が中国に進出するとき、中国は日本に比べて訴訟リスクが高いという情報を得ていたので、プラスチック容器の金型の写真の公証を取得して証拠保全を行っていたのです。

裁判所はB社が提出した公正書に基づいてB社がA社の意匠出願日より前に金型を製造していたことを理由にB社に先使用権を認めました。

 

先使用権というのは、A社が意匠出願する前にすでに金型を製造していたB社に対して金型製造の継続を認める権利です。

実は中国で先使用権が認められるケースは多くありません。

今回の場合、B社が金型の写真の公証を取得したことが決め手になりました。

公証書がなかったら先使用権は認められなかった可能性が高かったでしょう。

 

B社がA社より先に金型を製造していたことを証明する方法として公証の他にもタイムスタンプがあります。

タイムスタンプは、時刻情報が刻印された時刻に電子データが確実に存在していたことを証明する電子認証です。

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photo credit: aka Jens Rost via photopin cc

 

2014年1月現在、中国の裁判所がタイムスタンプを理由に先使用権を認めたケースはありませんが、将来的に裁判所が証拠として採用することが期待されています。

また権利者から警告書が届いた場合に、タイムスタンプが刻印された資料を権利者に提出し先使用権があることを理解してもらえば無用な争いを避けることができます。

 

タイムスタンプは公証人や弁護士が介在することなくコンピュータさえあれば取得することができます。

公証人や弁護士が介在することがないので書類の内容が外部に漏れることがありません。

 

中国では連合信任タイムスタンプセンター(UniTrust Time Stamp Authority)がタイムスタンプサービスを提供しています。

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画面右上に見えるのが国家法定時刻源による時刻情報です。

この時刻情報が認証を必要とする書類に電子的に刻印されます。

 

参考

INPITタイムサービス保管サービス

一般財団法人日本データ通信協会タイムビジネス認定センター

総務省 電子署名・認証・タイムスタンプ その役割と活用

 


弁理士 田中智雄
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