登山者が撮影した御嶽山の噴火映像が連日メディアで報道されています。

当初は、噴火現場の現状をいち早く知ってほしいという目的で噴火映像をユーチューブで公表した登山者も、噴火の被害が深刻になるにつれて、これ以上、噴火映像を公開しないで欲しいという意思表示をしています。

 

今回の報道機関の噴火映像の利用を著作権法の視点からみると、以下の3点が気になります。

1.噴火映像は「著作物」か

2.報道機関は無断で噴火映像を利用していいのか

3.噴火映像を非公開にできるのか

 

1.噴火映像は「著作物」か

登山者が撮影した御嶽山の噴火映像は、「映画の著作物」として保護されます(著10条1項7号)。

「著作物」であるためには、創作性が必要です。

一定の場所に固定した機材で定点撮影したような映像であれば、創作的に撮影しているとは言えないので創作性はなく「著作物」ではありません。

今回のように、登山者がカメラワークを駆使して効果的に噴火映像を撮影した場合、創作性があるといえます。

 

2.報道機関は無断で噴火映像を利用していいのか

無断で第三者の著作物を使うことはできません。

しかし、例外的に著作物を自由に使える場合があります。

報道機関は報道目的のためなら著作物を自由に使うことができます(著41条)。

この規定のお陰で、報道機関は登山者の許諾を得なくても噴火映像を無断で利用することができます。

 

3.噴火映像を非公開にできるのか

著作権者である登山者の意思に反してまで、自由利用を認めていいはずがありません。

報道機関に報道目的の自由利用という例外が認められていますが、著作者人格権までもが制限されることはありません(著50条)。

 

著作者人格権の1つに公表権があります(著18条)。

著作物を公表するか公表しないかを著作者が決めることができる権利です。

報道機関に認められた例外規定を公表権で制限できれば良いのですが、実は公表してしまった著作物に対して公表権を使うことはできません。

公表権を使うことができるのは未公表の著作物だけです。

そうすると、すでに噴火映像をユーチューブで公開している以上、噴火映像を非公開にすることはできないことになります。

 

著作者の意思に反してまで、報道機関が優遇されるのは納得がいきません。

もう少し検討してみます。

 

登山者である著作者が噴火映像を公表した動機は、現場の状況をいち早く知って欲しかったからです。

噴火映像を非公開にしたいと思った理由は、現場の状況を知って欲しいという映像公開の目的をすでに達成したにも関わらず、その後、何度も噴火映像が使われたことで、今度は、被害者に辛い記憶を思い出させてしまうことを心配したからです。

 

報道機関の時事報道目的に認められた例外規定を検討してみます。

「写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。」

 

噴火が起きた直後に噴火映像を使うのであれば、「時事の報道」や「報道の目的上正当な範囲内において」という要件を満たしています。

噴火から時間が経つにつれて、報道のニュース性は低下します。

噴火から数日も経っているにもかかわらず、当時の噴火映像を繰り返し使ったり、噴火映像をワイドショーで使うことが、果たして「時事の報道」や「報道の目的上正当な範囲内」と言えるのでしょうか。

 

法解釈では例外規定は厳格に解釈します。

著作権者が不利益を被らないように、報道機関に認められた例外規定を厳格に適用する必要があります。


弁理士 田中智雄
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