前回、「商標が類似するかどうかを判断することは、商品の出所を混同するかどうか、を判断すること」という講義をしました。

そして、その結果、「商標の外観が似ていても商標権を侵害するとは限らない」という結論に至りました。

 

今回は、商標の類否について、取引の現場で実際に起きていることを取り上げてみます。

商標の周知著名度が高くなると、商標の類似範囲が拡大していく、と考える方が多いと思います。

その結果、周知著名商標に似ている商標がついた商品は、全て周知著名商標がついた商品と出所の混同が生じる、と考えると思います。

 

ところが、実際には、商標の周知著名程度が高くなると、商標の類似範囲が狭くなる、という現象が起こります。

 

商標が余りに周知著名になってしまうと、人は商標の細部まで正確に記憶します。

その結果、商標の細部の少しの違いにも気づいてしまい、2つの商標が別の商標だと識別できてしまいます。

 

丁度、宝石鑑定士が、兎の毛程の違いをも識別できるのに似ています。

宝石鑑定士は、常にホンモノに接しいるため、少しの違いでも識別できる目利き力を身につけています。

 

商標が有名になればなるほど、たとえ「外観・称呼・観念」が類似していても、実際の取引の現場では商品の出所の混同を生じない、という現象が起こります。

 

本来であれば周知著名度が高い商標の保護範囲を拡大したいところですが、「出所混同」に拘っている限り、周知著名商標の保護範囲を拡大することは難しくなります。


弁理士 田中智雄
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